可燃ごみに眠る「雑がみ」を資源へ――分別のその一手が循環型社会を変える

2026年7月24日、公益財団法人古紙再生促進センターが全国の自治体の新人廃棄物行政担当者を対象としたオンライン研修を開催し、約260名が参加した。テーマは紙リサイクルの基礎知識と、家庭の可燃ごみに埋もれている「雑がみ」の資源化促進だ。

廃棄物行政の最前線を担う自治体職員が、紙資源の現状や課題、住民対応のポイントを学ぶ場となったが、このニュースは単なる行政研修にとどまらない。私たち一人ひとりの暮らし方や、ごみとの向き合い方を改めて考えるきっかけを与えてくれる内容だった。

8割が回収されても、まだ眠る紙資源

日本の古紙回収率は約80%と、世界的に見ても非常に高い水準にある。

一見すると十分な成果を上げているように思えるが、実際にはまだ200~300万トンもの回収可能な紙が残されているという。さらに家庭系可燃ごみの約12.7%には資源化できる紙類が含まれていると試算されている。

つまり、多くの家庭では「燃やすしかないごみ」だと思って捨てているものの中に、実はリサイクル可能な紙が相当量含まれているということだ。

紙リサイクルは単にごみを減らす活動ではない。

  • 廃棄物処理コストの削減
  • 焼却時のCO₂排出抑制
  • 森林資源の有効活用
  • 製紙原料の安定確保

といった多面的な価値を生み出す。

近年、多くの自治体が資源循環や脱炭素を掲げる中で、「雑がみ」の回収推進は比較的取り組みやすく、効果も見えやすい施策の一つといえる。

「雑がみ」が分かりにくいという課題

新聞、雑誌、段ボールは誰でも資源ごみとして認識しやすい。

しかし「雑がみ」となると話は別だ。

  • お菓子の箱
  • ティッシュの外箱
  • 封筒
  • 紙袋
  • メモ用紙
  • トイレットペーパーの芯

これらは本来リサイクル可能であっても、「こんな少量を分別しても意味がない」「どこまで出してよいのかわからない」といった理由で可燃ごみに混ざってしまう。

実は資源循環の現場では、この「わかりにくさ」が大きな障壁になっている。

制度や回収体制を整備しても、住民が理解し行動しなければ循環は進まない。逆に言えば、住民の行動変容を促す仕組みづくりこそが重要なのである。

「雑がみさまを探せ!」という発想

今回の研修で紹介された「雑がみさまを探せ!」は非常に興味深い取り組みだ。

「身の回りの雑がみにも神様が宿っている」という親しみやすいストーリーを活用し、家庭内に眠る雑がみを探し出して資源として送り出すことを促す。

環境啓発というと、どうしても「正しいからやりましょう」「地球のために頑張りましょう」というメッセージになりがちだ。

しかし人は、正論だけでは動かない。

楽しさや遊び心、家族との会話、地域イベントへの参加といった感情的な動機が加わることで、初めて行動につながる。

その意味で「雑がみさまを探せ!」は、分別を義務ではなく参加型の体験へ変えようとする試みといえる。

これは近年注目されるナッジ理論や行動デザインの考え方にも通じるものであり、自治体の啓発手法としても興味深い。

行政だけでは資源循環は実現しない

今回の研修内容で特に共感したのは、「紙リサイクルは多様なステークホルダーの連携によって成り立つ」という考え方だ。

資源循環は行政だけで進められるものではない。

住民が分別し、

事業者が回収し、

再生事業者が資源化し、

行政が制度設計と情報発信を担う。

この一連の流れが機能して初めて循環が実現する。

私自身、リサイクルや環境分野の事業に関わる中で感じるのは、「仕組み」以上に「伝えること」の重要性である。

どれだけ優れた制度であっても、住民に伝わらなければ動かない。

逆に、わかりやすく伝われば、人は意外なほど前向きに行動する。

だからこそ、今回のような自治体担当者向け研修は単なる知識習得ではなく、地域における資源循環の推進役を育てる機会として大きな意味を持つ。

MEi CONSUL視点:地域循環を支えるのは「見える化」

今回のニュースを読んで改めて感じたのは、資源循環の最大の課題は「見えない価値」にあるということだ。

可燃ごみとして捨てられた雑がみは、その瞬間に価値を失ったように見える。

しかし視点を変えれば、それは再び製紙原料になる資源である。

その価値を見える化し、行動につなげる仕組みをつくることが重要だ。

地域循環共生社会は、大規模な設備投資や高度な技術だけで実現するものではない。

家庭の紙袋一つ、お菓子の箱一つを資源として分別する日常の積み重ねから始まる。

全国約260名の自治体担当者が学んだ今回の研修が、各地域での新たな取り組みにつながり、「雑がみ」がごみではなく資源として循環する社会への一歩となることを期待したい。

投稿者: Keiichi Nakadai

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