アウトドアブランド「アイスブレーカー」の日本独自企画「ネイチャーダイ」が、今年も興味深い取り組みを展開している。
ネイチャーダイは、化学染料ではなく自然由来の染料を使ってメリノウール製品を染め上げるシリーズだ。これまでサクラやイチョウ、コーヒー豆殻など様々な素材を活用してきたが、近年はさらに一歩進み、「捨てるを活かす」という考え方を前面に打ち出している。
今回の山梨県北杜市との取り組みでは、日本酒製造で発生する酒粕、ワインの澱、ビール製造で残るホップの葉や茎といった、本来であれば廃棄される素材を染料として活用している。
環境配慮から地域共創へ
サステナブルな製品づくりというと、リサイクル素材の利用やCO₂削減が注目されることが多い。
もちろんそれも重要だが、ネイチャーダイの面白さは単なる環境配慮にとどまらない点にある。
酒粕やワイン澱は、これまで各事業者が処理費用をかけて対応していた副産物でもある。それを価値ある原料として活用することで、新しい商品が生まれる。そしてその背景には、北杜市の豊かな水資源や地元企業のものづくりの文化という地域のストーリーが存在している。
単なる「再利用」ではなく、地域資源を活かした価値創造になっているのである。
廃棄物の価値は見る人次第
リサイクルや資源循環の世界に関わっていると、「これは廃棄物だから処理する」という発想になりがちだ。
しかし実際には、廃棄物と資源の境界線は決して固定されたものではない。
酒粕もワイン澱もホップの残渣も、製造工程では不要になったものだ。しかし見方を変えれば、染料という新しい用途を持つ資源になる。
これは私たちが日頃取り組んでいる資源循環の考え方と同じだ。
古紙もそうだ。金属スクラップもそうだ。排出された時点では不要物でも、次の用途が見つかれば資源になる。
重要なのは、モノそのものではなく「どう使うか」という発想である。
商品ではなくストーリーを買う時代
もう一つ興味深いのは、ネイチャーダイが「ストーリー」を大切にしていることだ。
このTシャツは単に色がきれいだから売れているのではない。
「北杜市の酒蔵から生まれた色」
「ワイナリーの副産物から生まれた色」
「地域の自然と産業が生み出した色」
という背景に共感する人が増えているからだ。
近年、消費者は機能や価格だけで商品を選ばなくなっている。その商品がどこで作られ、どんな人が関わり、どんな価値観を持っているのか。そうしたストーリーに共感して購入するケースが増えている。
ネイチャーダイは、その流れを象徴する取り組みと言えるだろう。
MEi CONSUL視点
今回の記事から感じたのは、資源循環の可能性はまだまだ広がるということだ。
廃棄物を減らそうという発想だけでは限界がある。しかし、廃棄物を地域資源として見直し、新たな価値を生み出そうと考えれば可能性は大きく広がる。
しかも今回の事例は、大規模な設備投資が必要な話ではない。地域にある企業、地域にある副産物、地域にある技術を結びつけることで実現している。
資源循環とは、単にモノを回すことではない。
人をつなぎ、地域をつなぎ、新しい価値を生み出すことでもある。
アイスブレーカーのネイチャーダイは、「廃棄物を減らす」という守りの発想ではなく、「廃棄物から価値を生み出す」という攻めの資源循環の姿を示している。その点にこそ、この取り組みの大きな意義があると感じた。