資源の価値は使い方で決まる──カキ殻が変える海と地域の未来

廃棄物から地域資源へ──カキ殻が導く「豊かな海」の再生

広島・廿日市市で始まった、カキ殻を活用した海の環境改善プロジェクト。
この取り組みは、単なるリサイクルではない。むしろ、地域課題を解決する手段としての「アップリサイクル」として、極めて示唆に富んでいる。

カキ殻は、広島が誇る名産・牡蠣の加工過程で大量に発生する副産物。年間10万トン以上にも及ぶこの“厄介者”は、これまで肥料や飼料といった次善の用途に回されてきた。
しかし、それは凡庸な策に過ぎない。地域の海が抱える深刻な環境問題に対し、カキ殻が直接的な解決策となる──この構図こそが、アップリサイクルの本質だ。

ヘドロの干潟が、生き物あふれる海へ

かつて地御前の干潟は、ヘドロ化した泥から硫化水素が発生し、魚のエサとなるエビやアサリが住みにくい環境だった。
しかし、今年春に細かく砕いたカキ殻を干潟にまいたことで、状況は劇的に改善。殻に付着した酸素が泥の硫化水素と反応し、悪臭は消え、生態系が回復し始めた。

カキ殻の力──水質改善と生態系再生

広島県はカキの生産量日本一を誇るが、年間10万トン以上発生するカキ殻の多くは、これまで肥料や飼料として再利用されてきた。
それは確かに「資源化」ではあるが、用途としては凡庸で、地域の課題解決には直結しない。
今回のプロジェクトは、カキ殻を地域の環境問題に直接活用することで、より高次の価値を生み出している

子どもたちの歓声が響く干潟

干潟で行われた観察会では、エビやカニ、マテガイなど多様な生き物が確認され、子どもたちの歓声が響いた。
「カキ殻で海がきれいになった」「普段何とも思っていなかったものが、こんなに海に影響を与えるとは思わなかった」──地域住民の声が、変化の実感を物語っている。

10年後の海を見据えて

このプロジェクトは今後10年間にわたって継続される予定だ。
「まだ10段階の1。10年後には浜がもっと白くなり、生物もわんさかいて魚も取れるようになっている」
──そう語るのは、流域圏環境再生センターの山本民次所長。

さらに、JICA中国の新川美佐絵氏も「水質改善の技術が確立すれば、開発途上国への技術移転も可能」と期待を寄せている。

廃棄物から地域資源へ──アップリサイクルの本質

この取り組みは、地域資源の循環利用による環境再生の好例であり、アップリサイクルの本質を体現している。
「使い道がない」と思われていたカキ殻が、海を豊かにし、漁業を支え、子どもたちに自然とのふれあいを提供する。
それは、単なる再利用ではなく、地域の未来をつくる創造的な資源活用だ。

well being それではまた!!