「捨てられない想い」を、次の価値へ──銀座英國屋が10年続けるスーツリサイクルの本質
「このスーツを着て、人生で一番大切な商談を成功させたんです」
「亡き父が愛用していたスーツ、どうしても捨てられなくて…」
そんな声に、どう応えるか。
銀座英國屋は、10年以上前からその問いに向き合い続けている。
年間200着──数字の裏にある「想い」
オーダースーツ専門店・銀座英國屋が、衣料品リサイクルプロジェクト「BRING」と連携してスーツの回収を始めたのは2015年。以来、年間200着ペースでの回収を継続しているという。
この数字は、単なる衣料品の回収数ではない。
それは、5,000着を超える「捨てられない想い」の集積であり、
一着一着に込められた人生の物語を、次の価値へと繋ぐ営みだ。
ウールスーツは「自動車の内装材」に生まれ変わる
回収されたスーツは、JEPLANのサプライチェーンを通じてリサイクルされる。
特にウール素材のスーツは「反毛(はんもう)」という工程を経て、
自動車の内装材などに再生されるという。
「英國屋さんがやっているなら安心」
「社会貢献になるなら、ぜひ協力したい」
そんな声が、顧客から自然と集まってくる。
スーツを仕立てるという行為に、もう一つの意味が加わった瞬間だ。
「人的サステナブル」という考え方
この取り組みの根底には、創業者の理念「信頼を得られる装いを届ける」がある。
そして今、その理念は「人的サステナブル」という新たな視点へと進化している。
英國屋の平均年収は525万円(アパレル平均の130.9%)、
平均勤続年数は23年、入社3年未満の離職率はゼロ。
これは、単なる「働きやすさ」ではなく、
「働きがい」を重視した企業文化の成果だ。
若手が育つ、技術が継承される
スーツ縫製業界では、職人の高齢化が深刻な課題となっている。
そんな中、銀座英國屋の工房では20〜40代の若手が50%以上を占める。
「袖まで外すフィッティング」を可能にする専任技術者の存在も、
他のオーダースーツ店にはない強みだ。
「無料オーダー体験」で、敷居を下げる
「銀座のオーダースーツは敷居が高い」
そんな声に応える形で、英國屋は「無料オーダー体験」を提供している。
価格に不安を感じる前に、まずは接客とフィッティングを体験してもらう。
その上で、納得して注文してもらう──この姿勢にも、誠実さがにじむ。
循環するのは、服だけではない
銀座英國屋が目指すのは、単なる衣料品のリサイクルではない。
服に込められた想いを、次の価値へと繋ぐこと。
そして、働く人の技術と誇りを、次の世代へと継承すること。
服も、人も、社会も。
すべてが循環し、豊かになっていく未来を──
銀座英國屋は、静かに、しかし確実に、形にしている。
well being それではまた!!