ペットボトルの“当たり前”を、おくすりシートへ
― サステナビリティは「技術」ではなく「定着」がすべて ―
「ペットボトルはリサイクルするもの」
いまや誰もが疑わない“常識”だ。
では、
おくすりシートはどうだろうか。
ほとんどの人が迷うはずだ。
そして、その多くが「燃えるゴミ」に入れている。
これは意識の問題ではない。
仕組みが存在していないだけだ。
第一三共ヘルスケアが取り組む「おくすりシート リサイクルプログラム」は、
この“当たり前の不在”に真正面から挑んでいる。
サステナビリティは「難しいもの」では続かない
この取り組みの本質はどこにあるのか。
それは単なるリサイクル技術ではない。
「行動を変える設計」にある。
- 回収BOXを設置する
- 生活動線の中に組み込む
- 誰でも参加できる状態をつくる
これによって、
「やるべきこと」ではなく
「気づいたらやっていること」に変わる。
サステナビリティは、意識が高い人だけのものでは普及しない。
むしろ逆だ。
意識しなくても成立する仕組みが、結果として社会を変える。
3年半で20トン超という回収実績は、
まさにその証拠だ。
なぜおくすりシートは難しいのか
ここで改めて整理しておきたい。
おくすりシートの何が難しいのか。
- アルミとプラスチックが圧着されている
- プラスチックの種類が複数混在(PP、PVCなど)
- サイズが小さく、回収効率が悪い
つまり、
回収も難しいが、処理はもっと難しい
という構造だ。
従来のリサイクルは
「分ける前提」で設計されている。
しかし、おくすりシートは分けられない。
ここに大きな壁がある。
コンサル視点で見た「次の一手」
このプログラムで興味深いのは、
途中で戦い方を変えている点だ。
当初はマテリアルリサイクル中心。
しかし限界が見えてきた。
そこで選択したのが
**ケミカルリサイクル(ガス化)**だ。
この意思決定は非常に示唆的だ。
普通ならこうなる。
- 難しい → 改善を続ける
- 延長線上で解決しようとする
しかし今回は違う。
前提そのものを変えた。
これは“改善”ではなく、
アプローチの転換だ。
パートナー選びに現れる「覚悟」
もう一つ重要なのがパートナー選定だ。
3年間、うまくいかなかった。
断られ続けた。
それでも妥協しなかった。
- 環境負荷の低い方法であること
- 分別不要であること
- 実用化できるスケールであること
結果としてたどり着いたのがJFEエンジニアリング。
ここにコンサル的な視点を重ねると、
成功要因は明確だ。
「要件を下げなかったこと」
多くのプロジェクトは途中でこうなる。
- 少し現実に合わせる
- 少し条件を緩める
- とりあえず動かす
しかし、それをやると
最初に描いた未来には届かなくなる。
今回の事例は逆だ。
理想から逃げなかった。
「実証成功」はゴールではなく入口
ガス化の実証試験は成功した。
これは確かに大きな一歩だ。
しかし、コンサル的に見ると重要なのはその先だ。
- 大規模プラントの稼働
- 回収量の拡大
- 自治体以外への展開
つまり、
「再現性」と「スケール」
ここまでいって初めて、
“社会の当たり前”になる。
ペットボトルも同じ道をたどっている。
今回の取り組みは、
まだその途中にある。
「触れるリサイクル」が持つ意味
興味深いのがもうひとつある。
コースターなどに再生するワークショップ。
これは効率だけを考えれば、
正解ではないかもしれない。
しかし価値がある。
なぜか。
人は“見えない循環”を信じないからだ。
- 何に変わったのか分からない
- 実感がない
- 行動が続かない
だからこそ、
という体験が重要になる。
これはロジックではなく、感情設計だ。
この取り組みの本質
このプロジェクトを一言で表すなら
「当たり前をつくる仕事」
だと思う。
- 回収することが当たり前
- リサイクルされることが当たり前
- 循環していることが当たり前
サステナビリティの勝敗はここで決まる。
技術があるかどうかではない。
正論があるかどうかでもない。
“生活の中に入り込めるか”
それがすべてだ。
終わりに
コンサルの視点で見ると、この事例は非常に示唆に富んでいる。
- 仕組みから行動を変える
- 前提を疑いアプローチを変える
- 理想を下げずパートナーを探す
- 技術と感情の両方を設計する
そして最終的に目指すのは、
「意識しなくても続く社会」
だ。
ペットボトルがそうなったように、
おくすりシートもいずれそうなるかもしれない。
そのとき初めて、この取り組みは完成する。
サステナビリティとは、壮大なテーマのようでいて
本質はシンプルだ。
“当たり前をひとつ、増やすこと”
その積み重ねが、未来をつくる。