今回の入院は、言うならば「想定外の強制停止」だった。仕事も予定も一旦すべて止まり、身体と向き合う時間だけが残った。しかし振り返ってみると、この時間は自分の思考のクセをリセットする機会になったと感じている。
その中でも大きかったのが、「確証バイアス」に気づけたことだ。
■ 確証バイアスにかかっていた自分
確証バイアスとは、「自分の信じていることを補強する情報だけを集め、それに合わない情報を無意識に排除する」認知のクセだ。言葉としては知っていたし、コンサルタントとしても注意しているつもりだった。
しかし、今回の入院で気づいたのは、「つもり」でしかなかったという事実だった。
日常の中では、自分の判断や経験に基づく意思決定が高速で回っている。そのスピード感の中では、「違和感のある情報」を丁寧に扱う余裕がない。そしていつの間にか、自分にとって都合のいいストーリーだけを積み上げていた。
例えば、
- 「このやり方が正しいはずだ」
- 「この顧客はこう考えているに違いない」
- 「この施策はうまくいく」
こうした仮説は、徐々に「前提」になり、やがて「事実」のように扱われていく。
今回の入院は、そうした前提を一度止める強制力を持っていた。
■ 何もできない時間がもたらしたもの
病室では、できることが限られている。仕事の電話も減り、外部からの情報も絞られる。結果として起きたのは、「思考の減速」だった。
この減速が、非常に大きかった。
普段ならスルーしてしまうような違和感に、じっくり向き合える。過去の判断を振り返り、「なぜそう思ったのか?」と問い直す余白が生まれる。
そこで見えてきたのは、
- 自分に都合のいいデータだけを拾っていたこと
- 反証となる情報を「例外」として処理していたこと
- 成功体験に引きずられていたこと
つまり、確証バイアスにしっかりとハマっていた自分だった。
■ リセットできた3つの視点
今回の入院で、意図せずリセットされた視点が3つある。
① 仮説はあくまで仮説でしかない どれだけ経験を積んでも、仮説は仮説。事実ではない。常に更新される前提として持つべきだという当たり前を、改めて身体で理解した。
② 違和感は重要なシグナル これまでは「ノイズ」として処理していた小さな違和感は、実は重要なヒントだった可能性が高い。むしろそこに、次の打ち手の種がある。
③ 意図的に反証を探す習慣 「これは正しいのか?」ではなく、「これは間違っている可能性はないか?」という視点を持つこと。これを意識的にやるだけで、思考の質は大きく変わる。
■ コンサルとしての再定義
今回の経験は、コンサルタントとしての自分の在り方も見直すきっかけになった。
これまでは「正解を提示すること」に重心があったかもしれない。しかしこれからは、「思考の歪みを整えること」の価値をもっと重視したい。
クライアントが抱えている課題の多くは、情報不足ではなく「見方の偏り」によって生じている。つまり、確証バイアスの影響を受けているケースも少なくない。
だからこそ、
- 前提を疑う
- 別の視点を持ち込む
- 反証を一緒に探す
こうしたプロセス自体が、提供価値になると感じている。
■ 強制停止は、時に必要なのだ
今回の入院は決して望んだものではなかったが、結果的には「思考のOSを再起動する時間」になった。
日常の中でこれをやろうとしても、なかなか難しい。だからこそ、意識的に立ち止まる時間を作る必要があるのだと思う。
確証バイアスは、誰にでも起こる。経験を積んだ人間ほど、そのリスクは高まる。
だからこそ定期的に、 「自分は思い込みで動いていないか」 を点検する。
今回リセットできたこの感覚を、日常に戻ってからも維持できるかどうか。ここが次のチャレンジだ。
入院という非日常の中で得た気づきを、日常にどう活かすか。
それが、今回の一番の宿題だ。