本屋になくて、図書館にあった
先日、劇場で観た『鬼平犯科帳』が思いのほか面白く、原作も読んでみたくなった。
映画やドラマを観ると、「原作はどう描かれているのだろう」と気になることがある。今回もそんな流れで文庫本を探しに近くの本屋へ向かった。
ところが、ない。
別の棚を探してもない。
時代小説コーナーを見渡してもない。
さすが池波正太郎。根強い人気なのだろうか。それとも映画効果なのか。何冊かは並んでいるものの、読みたい巻は見事に売り切れていた。
少々がっかりしながら帰ろうとしたとき、ふと思い出した。
そういえば、すぐ近くの公民館に市の図書館の分室があったな、と。
正直なところ、これまであまり利用したことがなかった。存在は知っていたが、「本を借りるなら大きな図書館」という先入観もあり、立ち寄る機会がなかったのだ。
せっかくなので覗いてみることにした。
すると、
「あれ……あるじゃん。」
探していた『鬼平犯科帳』が普通に並んでいる。
思わず心の中で突っ込んでしまった。
本屋で売り切れていた本が、こんな身近な場所にあっさり置いてあるとは。
さらに驚いたのは施設の快適さだ。
外は真夏の暑さだというのに空調はしっかり効いている。館内は静かで落ち着いていて、本棚には思った以上に多くの本が並んでいる。
目当ての本だけ借りて帰るつもりが、経営本を手に取り、歴史本を眺め、旅行記をめくり、気づけばあちこちの棚を徘徊していた。
こういう「乱読」が実に楽しい。
ネットではどうしても興味のある情報ばかりが表示される。しかし本棚の前では、自分が知らなかった世界が次々と目に飛び込んでくる。
思いがけない出会いがあるのだ。
考えてみれば、図書館というのは実にコストパフォーマンスが高い。
涼しい。
静か。
本がたくさんある。
しかも無料。
改めて考えると、かなり贅沢な空間ではないだろうか。
新しいサービスやビジネスを考える仕事をしていると、つい遠くの価値ばかり探しがちだ。しかし今回のように、身近にありながら見過ごしていた資源が意外と多いのかもしれない。
本屋で見つからなかった『鬼平犯科帳』のおかげで、そんなことを考えた。
さて、お盆休みが始まる。
せっかく見つけたこの穴場スポットを活用しない手はない。
鬼平をはじめ、気になる本をあれこれ借りて、今年のお盆は「借り倒し週間」にしようと思う。
積読ならぬ、積借。
それもまた、夏休みの楽しみ方の一つだ。